子どもを取り巻いてしまっている「自殺」問題に大人はどう向き合うか
年度初めになかなか重いテーマではあるが、無視してもまた良くない、と思った。
・・・2020年に自殺した小学生・中学生・高校生が、499人で過去最多だったのが、2021年に472人と微減し、2022年に再び増加して512人と、ついに大台の500人を超えた。
大台を超えたかどうかは、インパクトだけの問題で、一人一人の、未来ある子どもの人生が、誰もが望まない形で終えてしまった事実には変わらない。
・・・日本として、少子化の流れが確実にある。
子どもの人数は年々減っているのに、自死する子どもが増加している、という矛盾。
成人も含めた日本の自殺人数の統計としては、1998年に年間3万人を超えてから、14年連続で年間3万人がいて、2010年以降は減少傾向に転じ、2022年現在では、年間約2万人となっているとされる(警察省調べで2022年で21,881人)。
もちろん、その一人一人に、かけがえのない人生があるし、自殺に至るまでの経路・要因はさまざまである。
厚生労働大臣指定法人・一般社団法人「いのち支える自殺対策推進センター」HPより
(https://jscp.or.jp/training/houkatsuteki_kisokenshu_report_210917.html)
減少しているとはいえ、交通事故死者が約5千人なので、単純にその4倍以上の尊い命が、自殺によって失われている。
上記HP内に出てきている、父親を自殺で失った遺児の女性(当時大学生)の
「社会的にみれば年間3万人のうちの1人だったかもしれない。でも、私にとってはたった1人の父だった」という言葉が染みる。
さらに上記HPでも言及されているように、
自殺者は2010年以降は「減少」しているという言葉を使われがちであるが、
実際には、自殺者は毎年約2万人が新たに現れている、つまり累積的に「増加」している、といえる。
さらに、日本の10代の子どもの死因1位は、「自殺」である。
あわせて、身体的健康度は高いのに、精神的幸福度は諸外国と比較しても低い、というのはさまざまなデータで示されている。
・・そんな現状に、子どもを育む大人として、どのように向き合うか。
要因が個々のケースで複雑に絡まっているという事実や、
子どもの自殺者数のうち、男子高校生が約4割と、
性差や年代差もありうることを考慮すると、
対策としてこれさえあればよい、というのは安直ではある。
一方で、個人的かつ暫定的仮説として、
・もっと大人や世の中が、子どもの「遊び」の重要性を認識するとともに、
子どもがリアルな「遊び」を楽しむことができるよう、
工夫を凝らしていく必要がある、
・大人自身も子どもを遊ばせる/子どもと遊ぶための「余裕」をもてるように、
工夫していく必要がある、
と感じている。
・・・大人自身が余裕を持ちにくい世の中では、子どもも余裕を持てなくなる。
かといって、今の日本で、普通に生活しようとしても、なかなか余裕を持ちにくい。
だからこそ、創意工夫が必要。
もちろん日本が余裕を持てるようにと言った社会政策上の創意工夫も必要だが、
個人としてそこにアプローチできる人は限られるので、まずは自分ができるところから。
こども福祉の領域に長らくいて、
「遊び」の重要性は、日に日に実感としてもつようになっている。
かたや、日本では、発達的に望ましいとされるような「遊び」の機会が
少なくなりがちだとされる。
・・・といっても、ゲームなどのデジタル遊びの機会は多すぎるくらいので、
リアルな遊びが子どもにとっては重要である。
大人としては、ゲームやスマホに子どもが熱中していてくれたら
短期的には楽だとしても、そういった「スマホ子守り」「ゲーム子守り」に
依存することは、長い目で見た時に、子どもへの悪影響がとてつもなく大きい。
スマホやゲームに大人が依存しなくて済むように、
社会全体で子どもを育むムードがもっともっと醸成されたら。
そして子どもの遊びを温かく見守れる大人が増えてきたら。
・・・少子化の流れの中で、かけがえのない一人一人の子どもが、
心身ともに健康になり、さらには世の中の矛盾を
解決する方向に近づく、そんな気がしています